大震災の記憶も新しい今、災害時医療に携わりたいとお考えの看護師さんも多いのではないでしょうか。
こちらでは、そういった気概に溢れる看護師さんにぜひ入職して頂きたい、災害拠点病院の勤務内容などをレポートしていきます。

3.11を繰り返さない!災害拠点病院で災害医療

災害拠点病院は、地震や津波だけでなく噴火や台風被害なども含めた災害医療を行うための医療機関であり、2次医療圏ごとに1つ以上の割合で整備することになっています。その業務内容は多岐に渡りますが、ひとまず災害拠点病院勤務の看護師として覚えておきたいものを選んで紹介していきます。

災害拠点病院の独自業務

災害拠点病院災害時の指揮系統を明確にしておくことや、役割分担の決定など日頃から災害発生時の対策をしておく必要がありますが、特に必要なのはエアーストレッチャーの使用法を把握しておくことです。

神奈川県川崎市立多摩病院の救急災害医療センター副センター長をなさっている山田明生氏の調べによれば、訓練時にエアーストレッチャーを使えない人が多かったとのこと。また、避難優先順位の決定法についても普段から把握しておくことが必要です。

その他、牛追いテクニックといって避難時に集団下校のようなイメージで患者さんを動かせるように訓練しておくことも重要。有事の際に人を集めるコレクティングエリアの設定と、避難誘導法についても知っておかなければなりません。

●災害拠点病院が備えているべき要件

  • 治療用の器材や資材の備蓄があること
  • 災害発生時、応急収容に転用できる場所的余裕があること
  • 自家発電機能や応急テントの用意が有り、補給のない状態でも病院機能を維持できること
  • 近場にヘリポートの確保が可能であること
  • 医療機関の建物自体が耐震構造、耐火構造であること

ちなみに、現状では救急診療に用いる建物だけが耐震構造であれば良いことになっていますが、国は“全ての建物を耐震構造にすることが必要”という方針を示しています。実際、東日本大震災では病棟全体被害を受けて機能低下した災害拠点病院があり、今後の災害を見据えた抜本的な対策が急務であるとされているようです。

また、東日本大震災の発生時点では津波や洪水の被害を想定しておらず、今では津波リスクの高い地域の災害拠点病院は、建物の3階以上で救急診療ができるように改修していく必要性が訴えられています。

DMATの保有が災害拠点病院の課題

災害医療チーム現在、災害医療チーム(DMAT)の保有は特に災害拠点病院の条件とはなっていません。しかし、災害急性期に活動できるだけの機動性を有する医療チームは、災害時必ず必要になります。DMATは災害発生から48時間以内に活動できるだけの訓練を受けており、震災発生時のカギとされる“発生から72時間以内”に医療行為を行える唯一にして最大の人材といえます。

実際“災害医療のあり方に関する検討会”は2014年3月までに全ての災害拠点病院がDMATを保有するべきという見解を提示。さらに、災害拠点病院は他地域のDMATや救援医療チームからサポートを受ける可能性が高いため、病院としての受け入れ体制も整備するべきであるとされています。

災害拠点病院の看護師体験談

それでは、実際に災害拠点病院で働いている看護師さんの意見に耳を傾けてみましょう。一般的な総合病院とどのような違いがあるのでしょうか?

34歳・女性看護師の体験談

女性看護師震災以降、災害拠点病院を志望する看護師が増えたようですが、あんまり特別なことを期待していると拍子抜けしちゃいかもしれません。特に、もともと大きめの病院に勤めていた人はなおさらです。何せ、災害がなければ普通の病院ですからねぇ。とはいえ、災害時に人手が足りなかったら何のための災害拠点病院だか分かりませんから、人材が増えるのは喜ばしいことだと思います。常に災害に備えておくべき施設ですからね。

可能なら、災害が発生した時に雑務が増えることや、場合によっては物が横倒しになったりしたのを直したりする必要があることを考えて、屈強な男性がいくらかいると良いかもしれませんね。常に男性が数人勤務している状態なら、いつ災害が起こっても、病院機能を維持できるんじゃないでしょうか。

37歳・男性看護師の体験談

男性看護師米国心臓協会が提唱する一次救命措置BLSや二次救命措置ACLS、日本救急医学会の病院前外傷教育JPTECなど災害時の看護や救急について学び、いざという時に実践できるようになりたいなら、災害拠点病院や日赤、そして大学病院の3次救急は最適です。震災をきっかけに災害看護をやりたいという方が増えたことは本当に良いことで、その熱意が冷めないうちに是非とも災害看護ができる環境へと転職してほしいですね。

こうして、災害医療への関心が高まったというのは、私たちが先の震災から大きな教訓を得たという証拠だと思うんですよ。あの時亡くなってしまった方々の思いを無駄にしないためにも、記憶が霞まないうちに1人でも多くの看護師に来てもらいたいです!

以上から“災害時以外は普通の総合病院と変わらないから仕事内容の変化を期待しても仕方ないけれど、災害に備える意味でも人が来るのは歓迎”といった状態みたいですね。ただ、いざという時のために男手が必要という意見もありましたし、もし関心がおありなら是非とも災害拠点病院への転職を考えてみてはいかがでしょうか。

もし病院内に被害が出た時、充分な男手があれば病院機能を問題なく維持できるはず!先の惨禍を繰り返さないためにも、あなたの力が必要なのです。

医療コラム!岩手県の災害拠点病院

災害拠点病院:岩手医科大学付属病院災害拠点病院が整備されたのは1995年に発生した阪神・淡路大震災の後です。1995年の1月17日に震災が発生し、同じ年の4月に災害医療体制の整備を進めるため“阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会”による研究成果が発表されました。

この結果、広域からの搬送や救護チームを受け入れることのできる“災害医療支援拠点病院”を整備することが提言されたのです。この提言を受け、当時の厚生省(現:厚生労働省)が各都道府県に指示し、初期救急医療体制の整備が行われました。

こうして、災害拠点病院が誕生したのです。今後は、これまで軽視されていた洪水や津波にも対応できるよう整備を進め、東日本大震災の教訓を生かした医療体制づくりが求められていくことになります。

では、最後に岩手県内の災害拠点病院の概要をみていくことにしましょう。

現在、岩手県では11箇所の病院が災害拠点病院に指定されています。それでは実際にエリアごとの災害拠点病院をご紹介させて頂きます。

  • 盛岡エリア…岩手県立中央病院,岩手医科大学付属病院,盛岡赤十字病院
  • 岩手中部エリア…岩手県立中部病院
  • 気仙エリア…岩手県立大船渡病院
  • 釜石エリア…岩手県立釜石病院
  • 宮古エリア…岩手県立宮古病院
  • 久慈エリア…岩手県立久慈病院
  • 胆江エリア…岩手県立胆沢病院
  • 二戸エリア…岩手県立二戸病院

パッと見て分かるとおり、11院中9院が県立病院。県立病院は給与などが地方公務員の待遇に準拠する代わりに、採用枠が限られているのが特徴です。同じく岩手医科大病院についても大学病院ということで外部からの採用はやや厳しくなるでしょう。

一般的なルートから中途採用を目指す場合、盛岡赤十字病院がもっとも有利なのではないでしょうか。

ただ、求人リクエスト制度といって、求人の有無にかかわらず採用試験や面接の機会を設定してもらえるよう交渉してくれる制度を持っている転職エージェントに協力を仰げば、こういった敷居が高いとされる医療機関への転職も可能になるかもしれません。

もし災害拠点病院への転職に強い魅力を感じているのなら、是非ともそういった求人サイトに登録してコンサルタントに相談してみましょう。