不穏患者の対応というと精神科の専売特許のように思っている方も多いですが、実際には脳神経外科や、一般の外科・内科などでも頻繁にそういった場面に遭遇します。そうした時に頼りになるのが男性看護師。ここでは、そうした男性ナースの役割についてみていきましょう。
不穏患者対策に男性看護師は超重要
女性看護師では患者さんに力負けすることも多いため、不穏患者対策に男性看護師が役に立つのです。
マシなケースであれば、相手が男性というだけであまり暴力性が表に出なくなる患者さんというのもいるので、男性看護師がいるだけで対応がスムーズになることも。もちろん、そうでない場合も多々あるので男性看護師の側にも覚悟が必要ですが、少しでもスタッフ側の被害を抑えるために男性の力が必要なのです。
不穏患者対応の基本は、派手に振り回している手足の真ん前…一番危なそうな場所にまず自分が行くことです。殴られようと、噛みつかれようと決してひるんではいけません。とにかく女性看護師や、他の患者さんに被害が及ばないよう、覚悟を決めて壁になるのです。もちろん、対応相手の不穏患者本人にもケガをさせないよう要注意。
そして暴れている患者さんの腕を押さえ込み、他の医師や看護師に筋肉注射をしてもらうのです。
そうすればいったんは大人しくなるはずですから、後はバンドなどでベッドに固定。慣れれば次第に恐怖はなくなりますから、案外大丈夫です。
医師は男性が多いですが、忙しいせいか「暴れている」と報告しても「注射しといて~」と電話口で言うだけの方が多いんですね…。
実際に矢面に立つのは、多くの場合看護師ですから、男性看護師は最低でも各科に1人は必要なのです。
不穏状態になりやすい病気とは?
不穏状態を起こす可能性のある病気には色々なものがあり、一概に精神科だけの問題とは言えません。こちらでは患者さんが不穏状態になってしまう恐れのある病気を紹介したいと思います。
●要対応の不穏状態を起こしやすい疾患
- 認知症や統合失調症、鬱病などの精神疾患
- 感染症による脳炎
- 内分泌疾患(甲状腺機能亢進症など)
- インターフェロンやステロイド、抗がん剤などの化学療法による副作用
また、不穏とは少し違いますが、一時的に発生する意識障害としては譫妄があります。譫妄の場合にも、不穏状態と同じような対応が必要になることがありますので注意が必要。譫妄は持病で弱っている患者さんや、高齢者に大きなストレスが加わった場合などに発生することがありますから、どこの病棟で何時発生するか分かりません。
そういったケースがあることを踏まえると、全ての病棟で常時1名以上の男性看護師がいるのが望ましいのではないでしょうか。
鎮静管理に役立つCAM-ICU評価
譫妄状態にあるのかどうかを判断するのに役立つ方法を1つご紹介します。これはCAM-ICUというもので譫妄の有無を判定する方法として知られています。沈静管理が頻繁に必要になる職場で働きたい場合、こういった知識も必要になるでしょう。
【所見1:急性発症or変動性の経過】
- 基準値から精神状態が急性変化しているか?
- 異常行動が過去24時間に変動したか?
・YES⇒所見2へ
・NO⇒せん妄ではありません
【所見2:注意力欠如】
- 注意力スクーリングテスト(ASE)の視覚か聴覚どちらかを実施
・7点以下⇒所見3へ
・8点以上⇒せん妄ではありません
【所見3:意識レベルの変化を見る】
- RASSによって判定する
・RASS≠0⇒せん妄と判断
・RASS=0⇒所見4へ
【所見4:無秩序な思考が見られるか】
- 次の2セットのうち1セットを質問
Aセット | Bセット |
---|---|
1.石は水に浮くか否か | 1.葉は水に浮くか否か |
2.魚は海に生息するか否か | 2.象は海に生息するか否か |
3.1グラムは2グラムより重いか否か | 3.2グラムは1グラムより重いか否か |
4.釘を打つためには金槌を使用して良いか否か | 4.木材を切るために金槌を使用して良いか否か |
- 質問後に2本の指をあげて見せ、同じことをやるように指示
・誤答2つ以上で指示ができない⇒せん妄と判定
・誤答1つ以下で指示ができる⇒せん妄ではありません
不穏じゃなくても対応が必要な問題患者は多い
不穏状態ではないにしても、男性看護師のほうが対応しやすい問題患者は少なからず居るのが現状です。治療への不安から精神状態を大きく乱してしまう方は珍しくありません。
孤独を感じている場合などは、看護師に構ってもらいたいがためにセクハラまがいの発言をしたり、暴言を繰り返す患者さんを良く見かけます。セクハラが度重なれば女性看護師のストレスを増す原因にもなるでしょう。その点、男性看護師が相手ならセクハラのしようがありませんから、我々としては気楽なものです。
また、あまり女性の前では言えませんが、論理的思考力に関しては男性のほうが勝っていることが多く、感情的にならず淡々と対応するのが得意。暴言を繰り返す患者さんは看護師の反応を見たいという側面があるので、何の反応も返さなければ自然と収まることもあるのです。
そういった側面から考えても、やはり男性看護師の必要性は大きいといえるのではないでしょうか。