医療現場における人材不足解消の切り札になる可能性もある男性看護師。ここでは、そうした男性ナースの意義について詳しくみていこうと思います。
これからの病院に必要なのは男性看護師
そもそも“看護師=女性”という図式が一般的とされている現状のほうが半ば異常事態だということをご存じでしょうか。
衛生兵などの歴史を考えても分かるように、実はもともと看護というのは男性の仕事だったのです。世界的には修道士が奉仕のために看護業務を行っていた経緯もあり、日本ほど“看護師といえば女性の仕事”というイメージはないようです。
女性が看護師を務めるのが一般的になったのは近代になってからの話で、日本では明治時代に看護婦養成所ができたことが契機でした。その認識は現代になっても改められることがなく、戦後1948年に保健婦助産婦看護婦法が公布されたことで21世紀の今に至るまで同じ状況が続いたのです。こうしてすっかり、看護婦という言葉が一般化して女性の職業というアイデンティティを確立してきたのでした。
この法律が2002年に保健師助産師看護師法と改名されるに至り、徐々に男性看護師が復権してきているわけですね。かつては精神科やオペ室勤務くらいにしか男性看護師は見られませんでしたが、近年では一般病棟でも少なからず見かけるようになりました。このところは男性の看護師長なども以前ほど珍しくなくなってきています。
医療の進歩による看護業務の多様化・高度化の影響で、むしろ男性のほうが向いているとされる看護分野というものも出てきていますし、これからさらに男性看護師が増えていきそうですね。
ちなみに白衣メーカー「ナガイレーベン」ではナースキャップの2012年売上が2002年と比べて1/7ほどまで減ったそうですが、このナースキャップ廃止の流れも、衛生面からの配慮というのが主因ですが、男性看護師が増えてきてキャップ着用が時代にそぐわなくなったという側面もあるようです。
とはいえ、今でも男性看護師は看護師全体の5%程度。20人に1人くらいの割合でしかないのです。診療報酬が見直されて給与などの待遇面が改善されつつある今、男性看護師がよりいっそう増えていくことが望まれますね。
不穏患者への対応は男性看護師の独壇場
精神科だけでなく脳神経外科や一般の内科でも不穏状態やせん妄状態に陥る患者さんがいます。患者さん自身がケガをしたり病状を悪化させたりしないためにも、心は痛みますが押さえつけておくことが必要。屈強な男性患者が相手でも問題なく対応できるよう、常に一定数の男性看護師が必要なのです。ここでは、そうした男性ナースの必要性を痛感する場面について解説したいと思います。
女性社会の潤滑剤としての意味も
看護師の95%が女性であるため、ナースステーションは極端な女社会といわれています。そのために女性特有のドロドロした人間関係が職場環境を悪化させているという見方もあるのが現実…。これは何も女性が悪いわけではなく、特定の性別だけに偏った職場構成が問題だと思うのです。男性看護師がもう少し増えれば、ナースステーションを一般社会の環境に近づけることが出来るはず。人間関係をより良くしていくためにも男性看護師が必要なのです。
男性看護師の存在意義に迫る
こちらでは、男性看護師の価値を再確認するために看護師の歴史などを解説したいと思います。仕事を円滑化するためにも男性看護師が増加することの意義は充分。男性看護師が自分の仕事に誇りを持ち、自らの存在理由を再確認する契機になれば幸いです。男性看護師を増やし、性別を問わず看護という仕事が選べる時代はもうすぐ。私たち現役の男性看護師としても、その日が早く来るように尽力していきたいですね。